「ワークショップ」。
よく聞く言葉だけど、実際に体験したことのない方は「いったいどんなものなの?」と思われることでしょうね~。
今日はその疑問にひゅ~ちゃんがお答えします!
ひゅ~ちゃんとはやひろさんは、「ワークショップデザイナー育成プログラム(註1)」でワークショップづくりについて勉強したんですが、
このプログラムの総まとめとして、「ワークショップについて知らない人に対して『ワークショップとは何か』を説明する」というレポート課題が出たんですね~。
ひゅ~ちゃんは悩みに悩みましたよ…。
その結果、捻り出した説明はずばり、「ワークショップとは、『古典落語〝孝行糖″における町内の寄り合い』と似た性質を持つ活動である」。
なんじゃそりゃ~。
これだけ読んだのではよけいわからないかもしれないですが(笑)、
レポートの本文を読んでいただけばきっと、ワークショップを知らない方にも「ワークショップってどんなものなのか」が少しはイメージしていただけるのではないかな…。
ということで、当時書いたレポートを、ここに転載してみます!
「古典落語で説明する、『ワークショップとは?』」
古典落語「孝行糖(こうこうとう)」には、与太郎(年齢の割に発達が遅れている若者≒いわば社会的弱者)の支援策について、町内の人々が知恵を絞る寄り合いのシーンがあります。
私はこのシーンに、「ワークショップ」の特徴が描かれていると思っています。
与太郎は、発達は遅れていますが、とても優しく親孝行。それが認められて、お奉行様から5両のご褒美を貰いました。
町内の人々は、その5両を元手に与太郎に仕事を創り、社会的・経済的自立を支援しようとします。
寄り合いのシーンでは、大家さんを中心に、町内の面々が与太郎の特性を生かした商売や売り出し方について話し合い、合意形成していく様子が描かれるのです。
商材は、与太郎にも扱えるものは…と検討した結果「飴」に。商品名は、親孝行から取って「孝行糖」に。
キャッチフレーズは、与太郎が生来の陽気さや歌の上手さを生かして商売ができるようにと「歌う飴屋」に。
与太郎が歌うオリジナルソングやユニフォームも、皆の力で作り上げていきます。
このシーンで特徴的なのは、寄り合いの参加者が与太郎の自立支援策を考えることに関する当事者意識を持ち、自分たちの納得解を見つけ出すために主体的に考えを発信していくこと。
参加者には、自分の考えがメンバーに受け止められ、相互作用し、自分の言動により周囲を動かせている感覚があります(この感覚を「自己原因性感覚」と呼ぶそうです)。
また、その場で新たなアイディアがどんどん生まれるし(「即興性」)、オリジナルソングを作る過程で歌ったり、活動の進展にワクワク感を感じてもいます。
活動のプロセスに、思考だけでなく感情や体の動きも伴っているのです(「身体性」)。
ワークショップは、中野民夫氏(ワークショップ企画プロデューサー/東京工業大学教授)によれば、「参加者が自ら参加、体験し、グループの相互作用の中で、何かを学び合ったり創り出したりする、双方向的な学びと創造のスタイル」と定義されます。
また苅宿俊文氏(青山学院大学社会情報学部教授)によると、「コミュニティ形成のための他者理解と合意形成のエクササイズ」、つまり「よく知らない者同士が集まり仲間となっていくために、互いを理解し合い、皆の納得解を見つけ出していく練習をすること」が、ワークショップの前提条件です。
前述の定義や前提条件に照らすと、「孝行糖」の寄り合いのシーンはまさにワークショップ的であると、私は思うのです。
今挙げた「自己原因性感覚」、「即興性」、「身体性」は、合意形成に不可欠な「協働性」が機能するためになくてはならない要素ですが、同時に我々が見失いがちなことでもあります。
学校教育に慣れた我々はつい「誰かが正解を与えてくれる」と思いがちですし、成果主義の風潮はプロセスの軽視を生んでいるからです。
だからこそ我々は、ワークショップを通じてそれらを取り戻し、発揮の練習をする必要があると思います。
なお、寄り合いで参加者の活動をうまく引き出しているのは、終始承認と問いかけによって場を促進する大家さんです。
参加者が、安心安全な場で伸び伸びと主体的に活動するためには、ファシリテーターの果たす役割も非常に大きいといえます。
いかがでしょうか…。
今回の記事でワークショップがどんなものか、少しでもわかっていただけたとしたら、とてもうれしいです。
そして、この説明を頭のどこかに置いて、実際に「孝行糖」を聴いてみて頂けたら…と思います。
(ひゅ~ちゃん)
(註1)「ワークショップデザイナー育成プログラム」